株式会社ユー・エス・イーのトップ対談第6弾 「グローバル化に向けた戦略と経営者の想い」をテーマにNTTコミュニケーションズ株式会社 代表取締役社長の岩本哲也様へ当社代表取締役副社長・吉弘京子が対談を行いました。

2019年、新年度特別トップ対談として、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ 相談役 岩本敏男様へ当社代表取締役会長・吉弘京子が「情報産業の変化と働き方」をテーマにお話を伺いました。(2019年4月掲載)

情報産業はカオスの時代に

トップ対談第6弾
吉弘

岩本様との出会いはいつ頃だったでしょうか。本当に長いお付き合いになりますね。

岩本

そうですね。かなり前のことになりますが、吉弘さんは業界内で「帽子のレディ」として有名でしたから、直接お会いする以前から存じておりました。

吉弘

そうでしたか。帽子は、会社の創業時からトレードマークとしております。私どもの会社は、1970年に創業し、2020年に50周年を迎えます。

岩本

それは、おめでとうございます。

吉弘

この50年の間に、情報産業の市場は大きな変化を遂げましたね。

岩本

日本では、パンチカードによるデータ処理業務を行うことから業界に参入された方が多いのではないでしょうか。

吉弘

私どもの会社は、初めはオペレーターの派遣業務からスタートしましたが、設立3年目くらいからパンチカード業務を始めました。

岩本

その後、ソフトウェア開発が普及し、そして技術が進化していく中で色々な浮き沈みがありました。しかし、これから起こる変化は、情報産業そのものに対してとても大きなインパクトを与えるものになります。

様々な場面でお話をしておりますが、すべてのデジタルの世界をつかさどる根源である「CPU」(処理装置)、「ストレージ」(記憶装置)、「ネットワーク」(伝送装置)の3つがエクスポネンシャル(指数関数的)に進化を遂げています。CPUは大量かつ迅速な演算が可能になり、ストレージは大量貯蓄化、ネットワークは高速化しました。これはコンピュータメーカやソフトウェア企業など、私たちの業界にとって大きな変化となりました。しかしこれからは、ITの変化がすべての業界に影響を与えるでしょう。

今、「デジタルトランスフォーメーション」という言葉とともに、すべての産業・企業に対して既存のビジネスから脱却し、新しいデジタル技術を活用することによって新たな価値を生み出していくことが求められています。

吉弘

「デジタルトランスフォーメーション」。最近、よく耳にしますね。大変なことがたくさんあった50年間でしたが、これからの時代が最も大変ではないかと感じております。

岩本

金融業や製造業など、どの業界でもAIやIoTを駆使した企業が現れることで、これまでトップでいた企業でさえもあっという間にその地位が崩れかねません。まさにディスラプティブ、破壊的なイノベーションが生まれることになります。日本の企業のトップは、そうした変化が起こることを分かっています。そのため、自社内にIT技術者やクリエイター、デザイナーを抱え、取り組みを進めてくるはずです。貸借対照表や損益計算書などを知らないと経営を語れないのと同様に、ITの重要性を理解できなければもう経営が難しい時代です。そうしたときに、日本の情報産業で生きている私たちは、来るべく時代に何をすべきか。大きな変曲点となる、大変な時代が訪れるという認識です。

吉弘

おっしゃった通り、別の業界の方々が情報サービス業界の技術を使って新たな事業を展開していくとなると、私たちはどうやって生きていくべきかと悩ましいですね。私自身も世界中に飛び出し見て歩いて、勉強し、そこでキャッチしたものからヒントを見出し、何をすべきかを考えております。

岩本

これまでは、コンピュータの変化とともに私たちの仕事の中身も変わりはしましたが、変化に合わせて勉強し対応することで仕事や価値を生むことができました。これからはクラウド、そしてAIやIoTといった時代に入っていきます。新しい時代でも技術が変わるだけでしたら、これまでと同じように技術を学び取り組むことで対応できるでしょう。しかし、大きく変わるのは、企業自体のビジネスモデルです。まさにカオスの時代になりますね。

自分がやりたいことを一生懸命できる人は仕事も一生懸命できる

吉弘

私たち自身の仕事や働き方を変えていくべき、ということですね。働き方と言えば、岩本様は2018年10月に「自分のために働く」というタイトルの本を出版されていますね。株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(以下、NTTデータ社)の社長を務められていた岩本様が「自分のために働く」というテーマで本を書かれたことについて、読ませていただく前までは不思議に感じておりました。

岩本

内容としては、仕事と向き合うための心の持ち方についてまとめております。これまで働いてきた中で色々な方に出会い、たくさんの人生があることがわかりました。長年に渡って同じ会社で会社のために勤め上げた方。会社を足掛かりにステップアップしていく方。何が幸せかというのは、必ずしも一概には言えないものです。働く方の一人ひとりに、キャリアや家族や友人との関係、地域や社会の中での在り方など、たくさんのバックグラウンドがあります。

とくに、NTTデータ社はM&Aを行っているほか、グローバル展開も行っているので、様々な人生を歩んできた方がいます。ですので、本にも書いてありますが、私は「会社のために働きなさい」とは一切言いません。それぞれが、自分自身でやるべきことがわかっており、取り組んでいくことこそ、自らがこの世に生を受けた本当の価値だと思い、徹底的に行動してほしいと思っています。それが会社のためになり会社の仕事に貢献することにもなる、というのが私の信念です。

吉弘

「自分のために働く」とは自分さえ良ければいい、ということではないのですね。

岩本

タイトルだけ見ると、自分のためだけに働けば良い、会社はどうでも良いと思えてしまうかもしれません。しかし、本の中では、自分だけのためや利益のためだけに行動しなさいなんてことは一切書いてありません。

吉弘

そうですね。自分自身がやりたいことをしっかりと行うためには、仕事もきちんと取り組まないとできません。

岩本

その通りです。自分がやりたいことを一生懸命できる人は仕事も一生懸命できます。節理にかなっていると思いますよ。

トップ対談第6弾

ロングターム・リレーションシップを築く

トップ対談第6弾
岩本

こうした時代の変化の中では、原点に返った上で自分の会社が持っている強みを見直すことが大切だと思っています。自分たちの会社は何が強く何で生きていくのか。これは、常に変えていくべきことでもあります。

吉弘

そうですね。私どもの会社の強みについてですが、周りの皆さんからは「家庭的な心のつながりを大切にする会社ですね」とお話をいただく機会が多くあります。「ユー・エス・イーと一緒に働きたい」と思ってくださることが、会社の強みのひとつと考えております。

岩本

私たちもロングターム・リレーションシップ(深い理解による信頼関係の構築)、いわば家庭的な関係性を築いていただけていることは感謝しております。ユー・エス・イーさんとは、バチカン図書館のデジタルアーカイブや自動車ワンストップサービスなど様々なプロジェクトでお付き合いをさせていただく中で、ユー・エス・イーさんが「やりましょう」と言ってくださったら、最後まで必ずやり遂げてくれるという信頼を寄せています。これは吉弘さん自身のパワーでもあると思います。

吉弘

ありがとうございます。デジタルアーカイブのお仕事については、NTTデータ様がビジネスを開始した2002年頃から私どもも携わらせていただいております。大変なことがたくさんありましたが、当時から「ユー・エス・イーができることは一生懸命させていただきます」とずっとつながりを持って、お仕事をさせていただいております。

岩本

長いお付き合いですね。素晴らしいことです。

吉弘

お付き合いの中では、2017年に世界国際電気通信会議(WCIT)で岩本様にご講演をいただき、大変好評でした。あの時は、WCITの議長を務められたCISAの邱理事長から「情報産業において日本のトップ企業の著名な経営者を紹介してほしい」と依頼があり、当時NTTデータの社長であった岩本様にお願いさせていただきました。心よくお引き受けいただきまして、ありがとうございました。講演後、邱理事長から「とてもインパクトがあり素晴らしい講演でしたね」と直接話しがあり、同席した私も日本人として非常に誇らしく思いました。

岩本

ありがとうございます。

自分にとっての真実を得心できれば頑張ることができる

吉弘

最後に座右の銘をお聞かせいただけますか。

岩本

『真実一路』です。私は長野県の諏訪清陵高校に通っており、通学時に下げていた肩掛けカバンの帯の部分に漢詩が貼り付けてありました。孟子の中の一節「自反而縮(みずからかえりみてなおくんば) 雖千萬人(せんまんにんといえども) 吾往矣(われゆかん)』です。簡単に四文字熟語で言い換えると『真実一路』と言えます。『自反而縮 雖千萬人 吾往矣』は、自分が振り返って進む道がこうだと思ったら、仮に1千万人が意義を唱えてもその道をまっすぐ進もうということ。『真実一路』も自分にとっての真実・正しいことは、やるべきことが何か分かればまっしぐらに進め、ということだと思っています。

孟子の一節について、若い頃は『自反而縮』よりも『雖千萬人 吾往矣』が難しいと思っていました。自分が行くべき道がわかっても、こうしようと思ったことについて、上司やお客様、家族などから反対されてしまうことで実現が難しくなるのかなと。しかし40歳を過ぎ、惑わずの頃になり意識したのは上の句、つまり『自反而縮(みずからかえりみてなおくんば)』でした。自分にとっての真実を本当に自分が得心することができたならば、頑張ることができます。本当に自分が何をすべきかということを、しっかりと認識することが重要だと思っています。

吉弘さんの座右の銘もお聞かせください。

吉弘

私は半世紀近く仕事をする中で、自分が一生懸命努力することは当然のことだと思っています。努力する中で、周りの方たちが手を貸して下さる。自力と他力ですね。そして、岩本様ともそうですが、たくさんの出会いがあったことは神様から頂いた手配だと感じ、感謝をしております。ですので『自力・他力・神力』をとても大切にしております。

本日はたくさんのお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました。

トップ対談第6弾
  • NTTコミュニケーションズ株式会社 岩本 敏男様
    株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
    相談役

    岩本 敏男(いわもと としお)様

    昭和51年4月 日本電信電話公社入社
    昭和60年4月 日本電信電話株式会社に移行
    昭和63年7月 エヌ・ティ・ティ・データ通信株式会社に移行
    平成10年8月 株式会社エヌ・ティ・ティ・データへ社名変更
    平成16年6月 同 取締役決済ソリューション事業本部長 兼金融ビジネス副事業本部長
    平成17年6月 同 執行役員 金融ビジネス事業本部長
    平成19年6月 同 取締役常務執行役員 金融ビジネス事業本部長
    平成20年7月 同 取締役常務執行役員 金融分野担当
    平成21年6月 同 代表取締役副社長執行役員
    平成21年7月 同 代表取締役副社長執行役員 パブリック&フィナンシャルカンパニー長
    平成23年6月 同 代表取締役副社長執行役員 営業統括担当、技術統括担当
    平成24年6月 同 代表取締役社長
    平成30年6月 同 相談役(現職)
    中央省庁システム、日本銀行、東京証券取引所など、社会インフラとなるビッグプロジェクトをシステムエンジニア、プロジェクトマネージャーとして数多く手がけ、日本のIT高度化に大きく貢献。著書に『IT幸福論』(東洋経済新報社 2013年)、『自分のために働く』(ダイヤモンド社 2018年)。

  • 株式会社ユー・エス・イー 吉弘 京子
    株式会社ユー・エス・イー
    代表取締役会長

    吉弘 京子(よしひろ きょうこ)

    福岡県久留米市出身。

    1970年、学生時代の仲間3名と株式会社ユー・エス・イーを創業。同年、システム研究所を東京に開設
    1985年、日本電信電話公社(現NTT)の民営化と共に、業者登録認定を受ける
    1995年・2005年、NTTデータから「協力企業大賞」を受賞
    1997年、一般社団法人日本自動認識システム協会主催「システムインテグレーション優秀賞」受賞
    1998年、通産省(現経済産業省) SI企業認定を受ける。
    2000年、ピープルソフト(現オラクル)を活用し、ERPで人事制度改革はソフト業界初の試みを行う
    2000年、Salesforce.com Inc社を訪問し、翌年にSalesforceを社内導入
    2002年にセールスフォース社とパートナー契約を締結。日本国内で多くの顧客にサービスを展開
    2005年、ピープルソフト伝道師の「最優秀賞(Excellent Evangelist)」の評価を受け、“ピープルソフトのクィーン”の愛称で親しまれている
    2018年、株式会社ユー・エス・イー 代表取締役会長(現職)
    2019年現在、久留米商工会議所議員、ソフトウェア事業協同組合副理事長、ASPIC執行役員およびグループ会社2社、IT系ベンチャー企業への投資・支援を行う。