ico_closeico_searchicon-angleicon-facebookicon-hatebuicon-instagramicon-lineicon-linked_inicon-pinteresticon-twittericon-youtubetargetblank

株式会社セールスフォース・ドットコム取締役兼相談役 宇陀栄次様

株式会社セールスフォース・ドットコム取締役兼相談役 宇陀栄次様
株式会社セールスフォース・ドットコム取締役兼相談役 宇陀栄次様

クラウドサービスとITのビジョン

2014年7月、株式会社セールスフォース・ドットコム取締役兼相談役・宇陀栄次様へ株式会社ユー・エス・イー代表取締役副社長・吉弘京子、取締役副社長・林勢二が「クラウドサービスとITのビジョン」をテーマにお話をお伺いしました。そのときの詳しい内容を前編と後編にわけてお届けします。

「変わらない社員教育への姿勢」と「変えていく技術とサービス」

吉弘

1970年に創業した私どもの会社がSalesforceに出会ったのは2001年のことです。振り返ってみますと「新しい技術やビジネスをいち早くキャッチしていかないと生き残れない」という危機感を持ちながら、Salesforceが日本に上陸されたことを知ってすぐに訪問しました。そしてその時にプレゼンテーションを見せていただき「これまでのITの時代は終わった」「Salesforceを取り入れる時代がきたら大変なことになる」と考えたことを今でもよく覚えています。

その後、第1回目のサンフランシスコでのSalesforceのイベント「Dream force」に参加しました。その時のもの凄いエネルギーを感じ、これは凄い、何か大きな動きに変えていくものだと思い、帰国してからすぐに社内で勉強することにしました。弊社は会社をつくったとき、何かの日本一にならなければいけないと思っていました。しかし、当時は力がなかったものですから「礼儀作法で日本一になろう」と社員教育に力を注ぎ、少しずつ技術力を高めていきました。その企業文化は設立以来変わらず努めてきましたが、Salesforceとの出会いが一番の衝撃でした。

宇陀

私の好きな言葉に「不易流行」という松尾芭蕉の言葉があります。「絶対に変えてはならないものと、どんどん新しいものを追いかける」というのが常にバランスを保っていなければいけないと思うんです。御社は45年という伝統のなかで“社員の礼儀”を大切にされているように、本当に感じの良い社員の方が多く、企業の大きな競争力になっていますね。その一方で新しいことに関してはどんどん取り組み、非常にうまくやっていらっしゃる。

今は「スピードが大事」といいますけれど、「アジャイル」というのがキーワードだと思います。「アジャイル」というのは俊敏という意味ですから、「スピード」とは違いますよね。「“行こう”と思ってから、“戻る”というところまでを含めた俊敏さ」というのがこれからの企業に大事なのではないでしょうか。

我々もSalesforceやクラウドを「アジャイル」と標語していくつも取り組んでまいりました。旅行会社様の例ですが、非常に短期の案件がございました。時間が限られていたため、今最低限必要としているシステムから作り始めました。続いて、必要になってきたものを加えていき、今でも取り組んでおります。

イノベーションに要件定義はいらない!? アジャイル開発がポイント

宇陀

従来のITとアジャイル開発の大きな違いというのはいくつかありますね。英語では「Bottom Line」と「Top Line」があり、「経費やコストを効率化しよう」というプロジェクトと、「新しいサービスや商品、新しい顧客をつくろう」といった、成長させて売上を伸ばすプロジェクトのことです。
最近、企業は「Top Line」への意識が最も上がってきていると思います。しかし、新しいことへ挑戦なので、当然そこで要件定義をやろうとしても難しいですよね。今、わかっている業務を分析して改善するのは一般的なソリューションですが、新しいことをやろうとするのはまさにイノベーション。イノベーションに要件定義ってできないですよね。新しく創造することって今はわかっていないことになるわけですから(笑)。例えば、モバイルの機能を追加したりソーシャルの機能を追加したりといったことは数年前だったら要件にさえないことが今ではあるわけです。そのためには「Minimum Viable Product(MVP)」という「最小限の実現可能な製品あるいはシステム」を作って時代とともに進化させていくというアプローチが必要で、これこそ、まさに御社がやっていることです。

吉弘

ありがとうございます。実際、全国およそ5000ユーザーに対して、我々はアジャイル開発という手法でお客様と共に提供していけたことで、顧客の満足度を得ることができました。マーク・ベニオフさん(株式会社セールスフォース・ドットコム会長兼CEO)が「お客様と一体となって成功させていくということが大切」とおっしゃっていたことがよくわかります。

宇陀

我々もいつもそう思います。お客様との接点はとても多様化して、従来のSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)とは全く違う感じになってきましたね。その意味ではこれからも非常にこの分野は広がっていくと思います。やはりどの企業も経済が厳しかった時には守りになっていたと思いますし、クラウドもコスト削減のために使われていました。しかし、これからは成長していくための施策としてのクラウドがとても求められています。いよいよ我々は新しい企画・事業・市場・サービスといった仕組みを実現するお手伝いできるようになりました。

クラウドのセキュリティは提供する会社の価値観と信用度が基本

吉弘

数年前、クラウドのセキュリティ問題についてよく話題になっていました。「クラウドはセキュリティがダメ」というお声は今でも耳にします。

宇陀

セキュリティはどの会社でも完璧ということはないでしょうが、「自前のシステムの方が安全」ということもないと思います。「1万円だったら自分の家に置くけど、1千万円なら自分の家には置かないでしょ?」というのと同じ。自分の家に置くわけではないので不安になることもありますが、それを疑い出したらキリがありません。要するに、サービスを提供している会社がもっている価値観や信用がベースにあるのです。ITに関してもセキュリティに関しても常識がだんだん動き始めた気がしますね。

吉弘

そうですね。Salesforceのセキュリティはこういう仕組みだよという点もお伺いしてよろしいでしょうか。

宇陀

技術的な話になります。“顧客情報漏えい”は委託した外部の人間が情報を漏らしたなど、外部の責任にする人が多いですが、実は“情報管理の問題”にあると思います。
まず、データ・アクセス制御がしっかりしているので、限られた人がそれぞれの限られたデータにしかアクセスできません。次に、データはすべて符号化(01ビット)されてバラバラな状態ですので抜き出すこと自体が難しくなっています。まして、それを一人の人間が抜き取るのは非常に困難で、仮にデータ漏えいがあったとしてもデータとしての価値がありません。
世間では情報を抜き取られることに注目しがちですが、一番大変なことは情報を消されること。年金記録問題などがそうですが、全ての情報を守るといったら実際100億円くらいの設備投資費用がかかってしまいます。
今、国はいろいろな形でクラウドを使わないといけないなという考え方に変わってきていますそれを実現するために、金融情報システムセンター(FISC)でクラウドを利用する際のガイドラインを策定するのにSalesforceもちょうど関わっているところです。

IT投資は大企業だけのものではない!活用したい“中小企業向けのクラウド支援の補助金”

吉弘

国からのメッセージとして、クラウドを活用してコスト削減する「中小企業等省エネルギー型クラウド利用実証支援事業費補助金(データセンターを利用したクラウド化支援事業)」あるように、クラウドに対しては積極的ですよね。

宇陀

はい。経済産業省から、2015年に、中小企業がクラウドを利用する場合に初期費用の30%を補助するとのことですね。これは電力を少しでも下げたいってことと、競争力を上げることが目的としてありますよね。

吉弘

中小企業で「もうちょっと業績が良くなったらITに投資します」とおっしゃるところが多いですが、私は順番が逆ではないかと思っていました。

宇陀

一概には言えませんが、中小企業よりも大企業の方がITについて真剣に取り組む傾向が強いような気がします。最近、スーパー等を大きく展開している某大企業が大きな投資を行いました。やはり現状に甘んじず、常に変化を模索する必要があります。半年後には、中小企業もクラウド導入の波がくるのではないかと思います

NTTグループから信頼されるUSEの逃げない仕事姿勢

吉弘

最初に私どもとお会いしていただいたとき、弊社に期待されたことや印象はどのようなものでしたか?

宇陀

まず、私が就任してお会いしたとき、弊社は当時30人くらいだったにも関わらず、すでにUSEがどこよりも早く目をつけていただいていたことにとても驚きました。それに現在まで、我々のいろいろな取り組みをお手伝いいただくなかで、御社の悪い評判を聞いたことがありません。
また、吉弘さんはNTTグループの方々に広く信頼されているし、余人に代えがたいパーソナリティがありますよね。社員の方が難易度の高い案件にも逃げずに頑張っていらっしゃったので、私も信頼できる会社だと思いました。「社員の方々が真面目で誠実」、それが会社の一番の財産ですからね。

吉弘

社員がいなかったら、私は他の会社に大きな顔をして行けません(笑)。
品質の高さを評価していただいたようですが、具体的にどのようなところですか?

宇陀

クラウドのプロジェクトは通常アジャイルで行い、徐々に成長させていくのが正しい進め方ですが、多くのお客様は最初に要件定義でぎっちり機能を盛り込んで失敗してしまう。それを、御社が上手くリードされている点です。
変化する状況をどこよりも早くキャッチして常に先頭に立っていける会社だと思います。

USEの「システム診断」で最適なSalesforceの導入を実現

吉弘

弊社には、サービスの一つとして“システム診断”があります。情報システムの最適化を行うなかでSalesforceも提案させていただいております。とにかく新しい技術やサービスに貪欲に取り組んでいる我が社は、その強みを生かして、もっとSalesforceを勉強して他社に先駆けていけるチームを強化していきたいと思います。

宇陀

お客様がイノベータータイプの場合は、あまり説明しなくても少し機能を見せれば「試しにやってみようか」となりますが、アーリーアダプター(早く購入・採用する人)の場合は少し難しく、マーケットメーカーなどの大きな集団になってくると、今のシステムをまずは分析し、それから「この部分はクラウドがいい」というように少しお手前がいりますね。
「ここは現行の機能でここはクラウドがいい」と、御社のように上手く説明していただければ、市場が大きく開けます。

検討していただく企業も、システムを新しくするのにどうしても予算を確保しなければいけないので、その際にしっかりと分析したものを提出します。その上で、変えなければいけない部分で、Salesforceを導入したらいいと考える部分についてご提案させていただいています。すると長期間でお客様と一緒になって創りあげていくことができるんです。

宇陀

これまでは「開発が終わったら保守フェーズに移る」という考え方が普通でしたが、それでは開発がピークで保守はどんどん陳腐になっていきますよね。そうではなく、そこから先に進化させなければなりません。「新しいものを創りあげていく」という姿勢で取り組まれているということは、社員の方も楽しんでされているのではないでしょうか。

吉弘

そうですね。弊社の社員はまさにそのようです。技術者としても高められ、お客様と楽しそうにしていますね。

宇陀

さっきも申しあげたようにアジャイルというのは単なるスピード開発ではなく、行ったり戻ったり……。一度作ったものでも柔軟にお客様にあわせて「こういうふうに変えましょう」など、要望変更に迅速に対応することです。結果、お客様に満足していただくことになります。

吉弘

働いている人たちがただ作るだけじゃなく、お客様と話し合いながら仕様を変えていくということは醍醐味ですよね。“アジャイルはおもてなし”だと思っております。

大規模な国家機関のシステムも短期間・低コストでクラウド導入

吉弘

国の機関に対してSalesforceが「なるほど」とうならせたエピソードがありましたらお教えください。

宇陀

まずは、郵政の民営化です。システムを作るスピードだけでなく、24000箇所もある規模のところへ展開していくスピードが大事でした。24000局に独自のシステムを作っていたら数百年もかかってしまいますが、それが1つのオンラインで繋げられたというのが大きいかったですね。
それから、エコポイントです。5月末頃に依頼があって7月1日にスタートするといったタイトスケジュールに加えて要件が決まっていない状態でした。従来のITだったら断わるのですが、まず最小限のことから始めようと考えました。
「お客様が商品を買ったらエコポイントを付与する」、シンプルなシステムです。そうすることで、制度としてはスタートして、後から追加すべき機能の注文を受け、逐次対応していきました。最終的には決済のシステムまでやるといった流れになりました。

吉弘

弊社も気象庁のシステムをやらせていただいたとき、他社様では通常1年半で1億円以上のお見積り内容を、4ヵ月間の数千万円で行いました。これについても満足いただけましたね。

宇陀

ユーザー側ではなくITベンダー側で、クラウドにすると会社の利益が少なくなってしまうという考えが強いですよね。しかし、現実はIT産業の市場規模は下がらないはずです。
AppleがiPhoneで参入されたときは、その方面の産業が衰退してしまうと懸念されていました。実際、ガラケーのシェアは大きく落ちていきましたが、それは携帯電話が進化しなきゃいけない状況だったというだけで、産業全体の規模は膨らんだくらいですから。

クラウドを使うようになったお客様から「以前の汎用機のシステムと入力する画面や操作方法などは変わらないが、入力したデータをみんながクラウドで活用ようになり、データを打ち込む人の意識が“会社のために、閲覧する人のために”という考えに変わった」と言っていただいたことがあります。

宇陀

それは成功例ですね。結局“見える化”ってことですね。そのように、経営者は、従業員やお客様が喜んでいるのか苦しんでいるのかをみて状況を変えていくべきだと思います。

企業の成長のためのツールとして、まずはSalesforceを

吉弘

最後の質問になります。これからSalesforceを導入しようか悩んでいる方々へのメッセージをお願いします。

宇陀

企業の成長を考えるなら、何か新しいことをやっていきたいですよね?しかし、そこに膨大な先行投資ができる時代でもありませんし、非常に早く環境は変わってしまいます。すると、検討していることが逆にコストになってしまう。
少し考えて、まずはトライしてみることをお勧めします。やり始めてから俊敏に考えていくということが重要です。
クラウドはあくまでも用途に過ぎず、経営の本質は成長するために試行錯誤して改善していくこと。そういう道具として、基盤として、Salesforceは最適だと考えています。
是非、御社には最先端を走っていって欲しいです。

吉弘

本日は本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

プロフィール

株式会社セールスフォース・ドットコム
取締役相談役 兼
宇陀 栄次(うだ えいじ
株式会社セールスフォース・ドットコム
取締役相談役 兼
宇陀 栄次(うだ えいじ

1981年、慶應義塾大学法学部卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。
大手担当の営業部長、社長補佐、製品事業部長、理事・事業部長などを歴任し、2000年に退社。
2001年、ソフトバンク・コマース社長に就任。
2004年3月、Salesforce.com Inc入社。米国上級副社長に就任。
同年4月より現職の株式会社セールスフォース・ドットコム取締役相談役を兼務。

株式会社ユー・エス・イー
取締役副社長
林 勢二(はやし せいじ)
株式会社ユー・エス・イー
取締役副社長
林 勢二(はやし せいじ)

1966年、立教大学理学部卒。
1966年、株式会社協栄生命計算センター入社(現、アイネス社)。
ソフトウェア技術部門にてシステム開発に携わり、専務取締役を経て、子会社(株式会社KDS)の副社長に就任。
その後、本社に戻り常務取締役に就任。2001年に退社。
2001年、株式会社ユー・エス・イー入社。取締役副社長に就任。
技術営業本部の本部長として事業の執行および人材育成に尽力する。
特に社内マネジメント研修の取り組みに注力し、約10年間もの期間、毎週末に社員研修を行い、若手社員、リーダー社員、幹部候補生向けの研修を継続して実施し、現在に至る。

株式会社ユー・エス・イー
代表取締役会長 吉弘 京子(よしひろ きょうこ)
株式会社ユー・エス・イー
代表取締役会長 吉弘 京子(よしひろ きょうこ)

福岡県久留米市出身。
1970年 学生時代の仲間3名と株式会社ユー・エス・イーを創業。同年、システム研究所を東京に開設
1985年 日本電信電話公社(現NTT)の民営化と共に、業者登録認定を受ける
1995年 NTTデータから「協力企業大賞」を受賞
1997年 一般社団法人日本自動認識システム協会主催「システムインテグレーション優秀賞」受賞
1998年 通産省(現経済産業省) SI企業認定を受ける。
2000年 ピープルソフト(現オラクル)を活用し、ERPで人事制度改革はソフト業界初の試みを行う
2000年 Salesforce.com Inc社を訪問し、翌年にSalesforceを社内導入
2002年 セールスフォース社とパートナー契約を締結。日本国内で多くの顧客にサービスを展開
2005年 ピープルソフト伝道師の「最優秀賞(Excellent Evangelist)」の評価を受ける
     “ピープルソフトのクィーン”の愛称で親しまれている
2005年 NTTデータから「協力企業大賞」を受賞
2018年 株式会社ユー・エス・イー 代表取締役会長(現職)
2019年 久留米商工会議所議員、ソフトウェア事業協同組合副理事長、ASPIC執行役員
     およびグループ会社2社、IT系ベンチャー企業への投資・支援を行う。

※役職や所属は取材当時のものになります